ドローン=空撮映像というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、昨今ではさまざまな分野でのドローン活用が広まっています。
産業分野でのドローン活用は積極的に進められており、小型で細かい操作が可能という特徴を活かして、社会の課題解決に役立てられています。
その中の1つで注目を集めているのが「点検」です。
ドローンを活用した点検業務は、従来の方法の課題を解決し、新たな価値の創出が期待されています。
そこで今回はドローンを活用した橋梁点検について解説していきます。
ドローンによる橋梁点検のメリット・デメリットや活用事例についても詳しく見ていきましょう。
橋梁点検の需要は高まっている
国土交通省のデータによると2m以上の規模の橋梁は全国に約70万箇所もあると言われています。
建設年数が分かっている橋の中で、2023年時点で建設後50年を経過する橋は約43%、10年後には67%にまで増えていることも分かっているそうです。
橋梁を安全に使い続けるためには定期的な点検が必須です。
早期の対応も必要ですが、将来的に古くなった橋梁が増加するため、点検業務の効率化が求められています。
こういった背景から橋梁点検にドローンの活用が進められており、点検業務に対する需要は今後も高まっていくことが予想されます。
ドローンで橋梁点検を行う3つのメリット
ドローンを活用して橋梁点検を行うメリットとしては主に3つ挙げられます。
では、1つずつ詳しくみていきましょう。
作業の安全性が高い
従来の点検方法では、作業員が橋梁に足場などを組み、間近で作業を行わなければいけませんでした。そのため、高所の作業で落下などのリスクがありました。
ドローンによる点検であれば、作業員は地上で操縦を行い、カメラが撮影した映像をチェックするのみです。よって、安全性が飛躍的に向上します。
飛行ルートをプログラムした自動飛行ができる機体もあるため、操縦ミスによるリスクも軽減できます。
人や時間のコストが削減できる
ドローンによる橋梁点検によって、作業時間を大幅に短縮できます。さらに、必要な人員も削減できるため大幅なコストカットに繋がります。
人による点検では、足場を組むなど点検作業に膨大な時間を要していましたが、ドローンであれば、空中から幅広い点検が短い時間で可能になります。
人員もドローン操縦者さえいれば作業が成り立ちます。
コスト面の大幅な効率化が可能になり、生産性の向上や増益に繋げることもできるでしょう。
点検の精度が高い
人による点検ではチェックしにくい部分でも、ドローンであれば空撮によって簡単に点検作業が行えるようになります。
赤外線カメラによる温度分布のチェックもできるため、従来よりも高精度かつ広範囲の点検作業が実現できます。
ドローンで橋梁点検を行う3つのデメリット
ドローンを活用して橋梁点検を行うデメリットとしては主に3つ挙げられます。
ドローンによる点検も万能ではないということに注意しなければなりません。
天候によって点検予定が左右される
ドローンは飛行日の天候によって影響を受けてしまいます。
雨や風の日は安全にドローンを飛行させるのが困難なため、点検スケジュールの変更が余儀なくされるでしょう。
ドローンによる橋梁点検を行う場合は、天候も考慮しながら日程を作成し、予備日を設けるなど余裕を持たせることが大切です。
飛行が禁止された場所では点検できない
航空法や小型無人機等飛行禁止法といった規制法によって、点検場所でのドローン飛行が禁止されているケースも考えられます。
禁止エリアでの飛行を行うには許可申請を取得しなければなりません。
打音や触診による点検ができない
橋梁点検では作業員がハンマーなどでコンクリートを叩くことで生じる打音によって、損害の程度を判断するといった作業が行われます。
その他にも、触診による点検も行われるのですが、ドローンでは橋梁から離れた場所からでしか点検ができません。
そのため、橋梁点検にドローンを導入したとしても、従来の方法との組み合わせが必須となります。
橋梁点検にドローンを活用した事例を紹介
橋梁点検にドローンが活用された事例を紹介していきます。
実際の点検動画を見ながら、ドローンによる橋梁点検のイメージを掴んでみてください。
【ほくぎ】北陸地方整備局北陸技術事務所
橋梁点検の新しい取り組み⑨ 非GPS環境対応型ドローンを用いた近接目視点検支援技術
株式会社アイネット
小型ドローンを活用した橋梁点検における実証実験〜未来の橋ため〜
日進技研
大掛かりな設備も必要ありませんし、点検を行う人員も必要最小限で済んでいるのが分かります。
ドローンによる橋梁点検の普及に向けた課題
ドローンを活用した橋梁点検の普及に向けた課題としては以下の4点が挙げられます。
それぞれの課題について詳しく見ていきましょう。
機体の性能アップ
ドローンによる点検の弱点の1つに、「天候に左右される」というのがあります。
そのため、天候に左右されずあらゆる環境に対応できる耐水・耐風性に優れる機体の開発が必要とされるでしょう。
さらには、点検業務に特化した機体設計やカメラ性能など、機体全体の性能アップは必須です。
点検業務のマニュアル化
さらなる効率化や点検業務の画一化を図るためにも、マニュアル化は必須となります。
使用するドローンの規格や点検方法、評価軸など、個別の業者で対応が異なるのではなく、画一化された運用が求められます。
規制緩和や許可申請の簡略化
ドローンに関連する規制法は産業分野での普及スピードを遅めていると言えるでしょう。
さらなる規制緩和も求められますし、飛行許可の手続きを簡略化し、業務コストを効率化するなど、行政面での変化も必要となります。
ドローン操縦者の育成
産業分野でのドローン操縦者はまだまだ多くないのが現状でもあるため、ドローンによる点検業務を普及させるには、操縦者の積極的な育成が必要です。
ドローンスクールの整備はもちろんですが、ドローン操縦者としてのキャリア形成についての認知も広める必要があるでしょう。
まとめ
ドローンを活用した橋梁点検について解説しました。
点検業務にドローンを導入することで、安全性や効率性を飛躍的に高められることが期待されています。
デメリットももちろんありますが、課題を克服すれば将来的に普及していくと考えられるでしょう。