機械化が進む農業ではドローンの活用が増えています。いくつもの高性能を兼ね備えている小型航空機ですので、「自分の農場でも導入を始めたい」と考える方がいるのではないでしょうか。しかしドローンを導入するにあたって、以下のような疑問があると思います。
- 導入するメリットは?
- ドローンはどんなことに役立つの?
- 導入にはどれくらいのコストがかかる?
疑問を解決するためには、知識を取り入れる必要があります。そこで今回の記事では、農業用ドローンのメリットや活用方法、導入コストについて解説します。
農業用ドローンとは?
ドローンには様々な種類が存在し、大まかに分けるとトイドローン・空撮用ドローン・産業用ドローンの3種です。もちろん農業用にも開発されており、近年使用者が急増しています。多くの人から注目を集めるドローンですが、一体どのような機能を持つのでしょうか。ここでは、ドローンが農業にもたらす役割や特徴を解説します。
農業に役立つ
農業の機械化が進み、ドローンの導入も増えています。
ドローンといえば、カメラを搭載して、ライブや被災地に利用されるイメージを抱かれるかもしれませんが、農業にも応用が可能です。使用者増加の背景には、「少人数でも作業ができる」「作業の負担が減るので楽」といった声があります。
農業で使われるドローンには、種まき、肥料・農薬散布といった機能が備わっており。幅広い作業が可能です。機能に関しては以下で詳しく説明します。
農業界の発展に必要
労働者の減少や高齢化が進むと、日本の農業が衰退してしまいます。衰退を防ぐためには、機械化を促進する技術を発展させる必要があるでしょう。
農業用ドローンもそのうちの1つです。人が作業するよりも、効率とスピードは勝ります。また、プログラミングしたコースを飛行することでき、小回りが利くため細かい散布作業も可能です。技術の発展で、農業業界は成長できます。
導入のメリット・デメリット は?
ドローンは農業界に発展をもたらす機械であるとお伝えしましたが、農業に導入することでどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
ドローン導入のメリット4選
ドローンの活用は従来の作業と比べて、良い点が多々あります。ここでは、導入のメリットについて解説します。
データ収集ができる
農業用ドローンは、データの収集や管理ができます。カメラを搭載することで、空から敷地内の状況を確認でき、リアルタイムでの観察が可能です。集めた情報をもとに、細かい対策や改善を立てることもできます。
作業効率のアップ
ドローンは農業における作業効率をアップさせることができます。自動飛行技術を兼ね備えており、プログラミングしたコースを正確に飛行することが可能です。そのため、散布作業にドローンを導入することで、最短ルートで散布を終わらせることができます。労力の負担が軽減できるため、少人数での作業が可能です。
可動範囲が広い
従来では無人ヘリや重機を使って作業を行っていましたが、細かい動作が難しいという欠点や立地の問題で導入が難しい場合がありました。一方、小型ドローンは小回りが利き、どんな場所でも飛行できるため、広い範囲で作業ができます。
防除効果
ドローンでの散布には、防除効果が期待できます。防除効果は農家にとって最も大きなメリットであり、害虫から作物を守るのに必要な要素です。また、ドローンでの防除効果は重機や人間が行うよりも作業スピードが速いため、活用すれば作業の時間短縮につながるでしょう。
参考 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/forum/R2smaforum/rice/seika82.html
ドローン導入のデメリット2選
ドローン導入は農業従事者にとって良い点ばかりではなく、欠点もあります。続いては、デメリットについて解説します。
コストがかかる
状況や環境によって、ドローンの導入はコストがかかることになります。使用している面積の大きさによって費用が異なり、依頼した方が費用が安くなることもあります。また維持費や保険金もかかるため、導入する前はコストの計算をするべきです。
可動時間が短い
ドローンはバッテリーで可動するため、作業時間に制限があります。長時間の作業には向いておらず、1台では使用時間が限られるので、作業の効率化が求められます。事前にドローン活用の設計をしておくと良いでしょう。
ドローンはどこで使われているの?
農業には分野が多数あります。ジャンル1つ1つに適したドローンが使用されるわけですが、導入効果が最もある分野はなんでしょうか。
ドローンの普及が進む分野
農業用ドローンの活用事例は、以下の通りです。
- 農薬の散布
- 肥料の散布
- 種まき
- 受粉
- センシング
- 物資の運搬
ドローンは農業への応用性が非常に高く、用途は多々あります。ドローンが続々と農業に普及していますが、どのように活用されているのでしょうか。
農薬の散布
農業用ドローンでは、農薬を散布することができます。プログラミングでコースを定め、自動飛行により行う仕組みです。人が手で農薬を散布するよりも正確性があり、より適切な量の散布が可能です。タンクには一定の容量があるため、事前確認が必要になります。
肥料の散布
位置情報を使ったシステムで、ドローンを操作することによって、精密な動きが可能です。無駄な動きを省くことで、効率アップや時間短縮に役立ちます。肥料の量も最小限に抑えることが可能で、コスト削減につながるでしょう。また、適切な量を散布することにより、作物の品質向上にも効果があります。
種まき
ドローンを活用した種まきは、空から鉄コーティング種子をまく形になります。重機では作業が難しい場所でも種まきできるため、非常に便利です。種まきに人が介入しなくなるので、作業負担を軽減できます。また、ドローンにより、短時間での作業が可能になったため、労働時間の減少につながるでしょう。
受粉
ドローンを使って空から花粉を混ぜた混合溶液を散布します。リンゴやなしといった果樹分野は、自家不和合性が強く、生産安定のために人工受粉が必要です。従来であれば多くの時間を必要としますが、ドローンによる時間短縮が期待されます。
センシング
空から撮った画像や映像の分析を行うセンシングも、ドローンの機能です。入手した情報から作物の状態を確認したり、害虫の発生源を特定したりできます。ドローンは多くのデータを集めるのに適しており、自分の農場がどんな状態であるのか明確になります。問題点の早期改善や対策が可能です。
物資の運搬
ドローンで農産物を運ぶことができます。機体にコンテナを取り付け、麦や果物を積み上げ、運搬する仕組みです。肉体労働の負荷が減ることが大きなメリットになります。農業従事者の高齢化が進み、肉体労働は厳しくなりますが、ドローン普及のおかげで、物の持ち運びが楽になるはずです。
参考 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/pdf/hukyuukeikaku.pdf
鳥獣被害対策
農業用ドローンは鳥獣被害を対策できる機能があります。
作物を育てるうえで最も多い被害は、野生の鳥や獣によるもので、令和元年度の被害総額は約158億円と深刻です。せっかく頑張って育てていたのに、途中で動物に食い漁られてしまったら辛いと思います。
そこで鳥獣被害の対策として期待されるのが、農業用ドローンです。具体的な対策方法としては、ドローンに赤外線カメラを搭載し、空撮を行います。
動物の生態を観測することができ、生息地域や生息している数を把握することが可能です。また、監視カメラのようにリアルタイムでの観察を行い、現場を見張ることもできます。捕獲器具と組み合わせて使用すると、対策効果は大きいでしょう。
今までの鳥獣対策は、人が現場まで足を運んだり、現場の状況を把握できないまま対策をしたりしていました。
ドローンの使用は、効率アップだけでなく、状況に合わせた対策を可能にします。
被害拡大を防ぐために、鳥獣対策用ドローンは今後ますます普及するでしょう。
参考 https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyozyu/201223.html
導入するためには?
農業発展の為にはドローンが必要不可欠ですが、導入のイメージができないかもしれません。農業用ドローンを導入するためには、どんなことをする必要があるのでしょうか。ここでは、導入までの流れと必要な資格、費用について解説します。
ドローンを導入するまでの流れ
以下はドローンを導入するためのステップになります。
1.スクールで講習を受ける
スクールに入り、ドローンについての知識や技術を学びます。機械をうまく扱うためには、操作方法についての勉強が必要です。
2. ドローン技術 証明書の発行
スクールを卒業すると、証明書の発行が可能になります。ドローンを導入する前には必ず手に入れましょう。
3. 機体を購入する
自分の農場に適したドローンを購入しましょう。農薬散布用・鳥獣被害対策用など様々な用途に合わせ、事前調査も行いましょう。
4. 作業を計画し、実行する
作業を計画し、実行します。失敗のリスクも考慮し、改善を繰り返すことで、ドローンをうまく活用しましょう。
資格を取得
ドローンを導入するためには、ドローン技能認定証明書が必要になります。知識や技量の証明として、取得は必須です。ただし、証明書には有効期限があるので注意しましょう。スクールで講習や実技に取り組み、卒業することで証明書を受け取ることができます。
民間の代表的なドローン認定資格は?
UAS LEVEL2
株式会社ドローンネットが運営のスカイファイトが発行している『UAS LEVEL2』は、国土交通省・管理団体認定の技能認定資格です。
スカイファイトでは、コース中に使用するドローンを全て無料レンタルできるので、ドローン購入費用がかからない点がメリットと言えます。
また、スクールのスケジュールは自由に組めるので好きな時間帯で講習可能です。
営業時間は11時~21時です。
スカイファイトで取得できる資格や証明書は、全部で3種類あります。
- UAS Level.2 技能認証カード
- UAS LEVEL2 技能認証(航空局飛行申請用)
- 10時間飛行証明書
資格や証明書を持っていると航空局への飛行許可申請が一部簡略化され、スムーズにドローンを飛ばすことができます。
スカイファイトでは、目的に合わせたコースを選択可能です。
受講費用は、3万円~22万円(税込)です。趣味程度から本格的なコースまで揃っているのでコース選びに迷うことはなさそうです。
スカイファイトが発行するUAS LEVEL2は、ライセンスの維持が必要になりますので毎月980円の月額料金が発生します。
年額払いもありますが、安くなるわけではないので月額払いでも良さそうです。
UAS LEVEL2の再発行には5,000円が必要になります。資格の紛失には気を付けましょう。
コストについて
ドローンの導入にかかる費用は高額です。数百万掛かる場合もあるため、多くの資金が必要かもしれません。
農林水産省は初期費用の目安として、80万〜300万円と公表しています。しかし、値段が高いほど性能は良いという訳ではないので、購入する場合は、用途や環境に適した機体を選択しましょう。
参考 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/forum/R2smaforum/mattingu/drone.html
補助金は?
ドローンにかかる費用は高額なため、導入できそうにないという方がいるかもしれません。初期費用だけでも数百万円かかり、回収に時間がかかりそうです。
「農家を産業技術で発展させたいけど、コスト面を考えると、ドローン購入に悩んでしまう」という方はどうすれば良いのでしょうか。
答えは補助金の活用です。ドローン導入にはコストがかかりますが、補助金の対象に該当すると、お金の負担が減ります。
なかなか購入に踏み出せない方は、補助金をチェックしてみてはいかがでしょうか。
将来性はあるの?
これまでドローンが農業に役に立つことをお伝えしました。多くのメリットを持つドローンですが、未来でも活用されているのか疑問に思うかもしれません。農業用ドローンに将来性はあるのでしょうか。
2022年現在のドローンは、赤外線カメラ・自動飛行技術といった機能が使えますが、まだ多くの課題が残っていることでしょう。
今後、農業の産業技術が高まることで、課題や欠点を改善し、さらに発展していくはずです。
農業用ドローンは続々と普及し、持っていることが当たり前になる可能性はあります。早い段階で導入することで、競合に負けない農場を作りだせると思います。
まとめ
今回の記事では、農業用ドローンの メリットや活用方法、導入コストについて解説しました。
記事をまとめると、以下の通りです。
- 農業用ドローンは利用者が増えている
- 多くの分野でドローンの活躍が期待できる
- 導入には補助金がある
- 防除効果、鳥獣被害対策も効果的
ドローンは幅広い分野で応用され、時代とともに進化しています。「コストが高い」「可動に時間制限がある」といったデメリットを克服し、現段階では解決できない問題もクリアできるようになれば、農業用ドローンは必要不可欠な存在になるでしょう。今後の発展に期待です。
より良い農作物を作るため、農業用ドローンを導入してみてはいかがでしょうか。