物流業界の人手不足や過疎地への輸送などの問題がありますが、ドローンを使えば交通渋滞や交通の不便なへき地にもスピーディに物を運べるメリットがあります。
業界は2022年12月5日に「レベル4」の飛行を可能にしました。
そんなドローンを利用した配送の現状とメリットとデメリットを説明します。
ドローン配送とは
インターネットの通販が増加する中、コロナの影響もあり今後も増加が見込まれます。
そんな中で物流業界ではいろんな課題をかかえています。
ドライバーの減少と高齢化、宅配の再配達や取扱数の増加などが問題となっています。
ドローンを利用すれば、スピーディに交通の便が悪いところも配送ができます。
人手不足もありドローンを利用することで配送を効率化できるということでドローン配送は進んでいます。
更に世界中に蔓延しているコロナの影響で、人との接触をできるだけ回避できるドローンでの配送を求められていることもあります。
日本のドローン配送についての現状
ドローンを飛行するには政府の認可をとる必要があります。
国土交通省の「空の産業革命に向けたロードマップ2022」にドローンによる物流のロードマップがまとめられています。
航空法が改正され2022年12月5日にレベル4の飛行が実現、有人地帯における目視外飛行が可能となり、人のいる場所へドローンでの宅配ができるようになりました。
ドローン配送のメリット
ここからはドローン配達のメリットを紹介していきます。
過疎地や山間部・離れ島などに配送できる
ドローン物流は人が少ない過疎地や山を登っていく山間部・船で行く離れ島などに物質を届けるのに力になります。風が強く定期便が欠航の場合や災害時にも医薬品や食料品を届けれます。
配達がスピーディ
ドローンは飛行高度150m未満と決められているので、他の障害物と衝突する事がありません。また交通渋滞に合うこともなく目的地まで直線的に航空することができてスピーディに配達ができます。
トラックドライバーの人手不足をカバー
トラック運転手の低賃金や長時間労働が原因で現在、人手不足が問題になっています。
厚生労働省の調査によると、求人倍率は平成22年度は0.5でしたが、平成30年度には2.68と高くなっています。
そこで深刻なドライバー不足を補うことができると注目されているのがドローン配送です。
ドローン配送の課題
ここからはドローン配達のデメリットを紹介していきます。
荷物は外部の影響を受けやすい
ドローンによる配送は、荷物は飛行機やトラックと異なり周りから完全に保護されていません。強い雨や雪の日の対応が必要です。
以外に故意にドローンを墜落させて荷物を盗まれることも考えられます。無人の配達のため、損害保険の検討も必要となります。
ドローンの安全性の確立
ドローンは空を飛行するので墜落すると大事故になりかねません。どういう事態でも安全に飛行できる為の対応が必要です。
墜落につながる暴風や高いビルとの接触などや、他のドローンとの接触事故も防御する対策が必要です。
ドローンの認可と操縦免許の制度の確立
新たな制度でレベル4になりドローンの機体認証と操縦ライセンス(一等資格)が必要となり、飛行毎の許可・承認が必要になりました。
運航管理ルールも明確化されて、飛行計画の通報・飛行日報の記録・事故発生時の国への報告を義務化されています。
人のいる場所へのドローンの飛行する場合は、「レベル4」の制度を守る必要があります。
ドローン配送の実用化を目指す物流業界
2020年8月から2022年3月まで「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」というドローンを利用した宅配の実証実験が行われておりました。
このプロジェクトに参加している企業はKDDI・日本航空・ウェザーニュース・Tera Droneの5社です。
アフターコロナにおける物流変革を見据えて、薬局や病院などへの医薬薬品のドローン配送や駅周辺のビルやマンションへのフードデリバリーサービスなどの実証実験を実施、運用の課題や収益性の課題などを検証しました。
海外のドローン配送の導入は
国内ではドローン導入に向けて法の整備や実証実験が進んでいますが、海外ではドローンを活用した宅配サービスもスタートしています。
いくつか紹介します。
通販の大手Amazonによる「Amazon Prime Air」
Amazonは2015年よりドローンによる配送をFAA(連邦航空局)の許可により実験を開始、2020年8月に配送サービスの許可が下りています。
現在Amazonのドローンは航空距離15マイルで15ポンドの運ぶことができます。Amazonの発送エリアはドローンで30分いないで発送可能なエリアです。
FAAのドローンは配送の許可があるのはGoogleのスピンオフ企業のWing社とUPSでAmazonは3社目です。
FAAは2024年度までに最終的なドローン規制をまとめるとしています。この大手3社が本格的にドローンの商用運用に至るのも近いです。
中国市場でドローン配送
中国のドローン開発は先進的と言われています。
世界に7割のシェアを持つDJIは中国の深センに本社があり、日本でも50%以上のシェアがあります。
ドローン宅配で牽引している中国EC大手のJD.comは、大型ドローンの開発や実証実験をしています。
楽天と提携しているので、楽天商品の配送にJDブランドのドローンが使われる場合もあるかも知れません。
国内のドローン配送の実証実験
ここからは、国内の実証実験の例を紹介します。
ドローンによる離れ島への輸送実験
ciroboticsが令和2年11月から令和3年2月に32km離島へ輸送実験をしています。
ドローンは補助者なしの目視外飛行のレベル3で生鮮食品等を往復32kmの離島へ配送します。
GCS(Ground Control Station)と多数のドローンの管理システムUTM(UAS Trafic NManagement)で注文を受けてから補助員なしで商品をドローンボートへ配送戻ります。
ドローンによる僻地への輸送実験
日本航空が兵庫県養父市でTerra Droneを使って、山間の轟地区へ医薬品や日用品を輸送する実証をしています。
ドローンは補助者なしの目視外飛行のレベル3で片道1.8kmの山間部を輸送します。
ドローンによる孤立地域への緊急物資の輸送実験
2020年11月にKDDIが目視外自立飛行のドローンを利用して災害時における孤立地域への緊急物質の輸送実証実験を行いました。片道3kmの往復を最大10㎏の物質の輸送を実装しています。
2020年の10月と12月に西表島から鳩問島へ物質輸送を実証しています。距離は6.8kmで風速10mと強風で定期船が欠航する中ドローンで一般用医薬品を届けました。以降は民間企業でシステム構築してドローンによる配送を進める予定です。
以上の実証実験は山間部や離れ島といった人がほとんどいない場所で、それほど重くない荷物を短距離で運ぶことが前提になっています。ドローンは無人地域での目視外飛行というレベル3で行われています。
「レベル4」ドローン配送に対するメーカーの取り組み
ドコモ
2012年11月にドコモは、ドローン事業「docomo sky」を立ち上げています。
電話回線を活用したセルラードローンの飛行や撮影、データの解析などができるクラウドサービスです。
現在の参加ドローンメーカーはACSL・イームズロボティクス・エアロセンス・NTTeDrone Technology、Airpeakが話題のSONY、Skydioの6社です。
楽天
楽天のドローン配送サービス「そら楽」の実証実験を行っています。
2016年5月から7月に千葉のゴルフ場でデリバリーサーピースを実施しました。その後2017年10月から2018年3月に東日本大震災後に商品配送サービスを実施しています。
2019年7月から9月に無人島へのドローン配送サービスを実施、2021年1月6日から22日でスーパーマーケット「マックスバリュー」から4km離れた島まで往復11kmを商品を発送しています。
ANA
2021年3月から固定翼型直陸着陸(VTOL)で離島で医薬品の発送を実証実験を始めています。
2021年11月29日から12月19日にドローンで人口密集地域を含む郊外へのセブンイレブンの商品を発送する実証実験をしていました。
「レベル4」を見据えてセブンイレブンの店舗の駐車場と店員でドローンの発着陸と荷物の取扱を検証しています。
ドローン配送サービスを本格運用に向けて実証実験を進めています。
Amazon
アメリカでは2020年にFAAの許可がおりてドローン配送が可能となっています。
日本では2018年より実証実験を始めて集落への生活用品を配送実験をしています。
片道10kmを15分で飛行を目視外飛行でレベル3を実証しています。
レベル4に向けた検証は、約2.3kgまでの荷物を自宅まで届けるサービスをカリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションで年内に開始するようです。
日本郵便
日本郵便は2021年6月ドローンによる配送サービスに向け、日立制御システム研究所(ACSL)と日本郵政キャピタルと業務提携しています。
日本郵便はACSLと配送ドローンの開発を進めるのと、国や自治体からの許認可を取得して地方の郵便局やコンビニに荷物を配送する予定です。
日本郵政は2016年からドローン配送を実施、2019年と2020年には東京都奥多摩町で荷物と郵便物を個人宅に届けることに成功しています。
2022年度の法改正に伴いルールを整備を進めています。ドローンで郵便物が届くのもそんなに遠い将来ではないかもしれません。
KDDI
KDDIのモバイルネットワークに対応するスマートドローンでデリバリーサービスを実証実験をしています。
ケーブルテレビで注文後PRODRONEを利用したKDDIのプラットフォームで商品を届けます。
2020年8月に伊那市で、2020年10月には約6.8km離れた島への医薬品の発送を実証、2020年11月には奥多摩町に東京都からの指示で緊急物質の輸送を実証、スマートドローンの活用に向けて検証が行われています。
日本化薬株式会社
2022年12月3日、日本化薬株式会社は産業用ドローン向けのパラシュートとエアバッグの有効性検証実験を行いました。
緊急パラシュートシステム「PARASAFE」とエアバッグシステムで衝撃を緩和できるのかを確認する実験です。
日本初のドローン向けパラシュートで、ドローン落下の際に少量の火薬を用いて緊急用パラシュートを展開します。
この技術は自動車のエアバッグに使われている技術を応用しているようです。
まとめ
ドローン配送について日本の現状を紹介しました。
日本のドローン物流はやっとレベル4が可能となりました。
ドローン配送を目指す業者も実証実験をしながら、レベル4のその先に向けて動いています。
ドローン配送が盛んになるのはまだ時間がかかるかもしれませんが、ドローン配送は省力化できてスピーディで便利ですが、安全性などの課題もあります。