自治体の課題解決のため、新たな取り組みとしてドローンを取り入れようとする自治体が増えてきました。
しかし、ドローンの利活用についてしっかりと学び、実際にドローンを活用できている自治体はまだまだ少ない状況です。
「自治体でドローンを取り入れるのはいいが、何に役立つの?」
「自治体の課題を解決したいが、本当に解決できるのかどうかわからない」
自治体の方から、このような声が聞こえてきそうです。
インターネットの情報を検索すると、自治体のドローン利活用は、実証実験の段階の情報が多く、本当に実現可能かどうかわからないことも確かです。
今後のテクノロジーの発展次第では、ドローンの利活用がもっと発展し、自治体が抱える課題を解決する役割を果たす可能性は十分にあります。
今回の記事では、自治体のドローン利活用の可能性、現在行われている実証実験、今後の展望についてお伝えしていきます。
また記事後半ではドローンを導入するにあたっての課題も紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
自治体の課題解決にはドローンが必須!?
自治体の抱える課題をドローンが解決する未来
自治体の抱える課題は、各自治体によってさまざま違います。
しかし、日本全体を考えると「人口減少・少子高齢化」による課題は、避けて通ることはできません。
例えば、過疎地域や離島における物流が滞ってしまったり、医薬品の配送が遅れてしまったりすることもあります。
また、中山間部における住民の方々の買い物がどんどんと不便になる恐れもあります。
高齢化が進んだ際、災害時の被災者発見が遅れたり、救助活動がうまくいかなかったりすることも出てきそうです。
これらの問題点については、これからの未来に起こる話ではなく、今現在の課題であることは間違いありません。
ドローンについてよく知らない自治体が多い
ドローンの利活用については可能性を感じるものの、どのように活用していいかわからないのが本音です。
そもそも自治体の職員の方々は、本来の業務がある中で、ドローンのような新しい分野を学ばなければなりません。
ドローンのような全く未知の世界を学ぶことは、大変労力がいることです。
ドローンについてのイメージ
ではドローンについてのイメージを再確認してみたいと思います。
「ドローンは何をするものですか?」
このように考えてみると大半は、「空を飛ぶもの」という答えが出てきます。
もちろん、ドローンは空を飛ぶものですから大正解です。
このイメージをもとに言い換えると、「人間ができないことを代わりにやってくれる」のがドローンということになります。
しかし、人も飛行機に乗ったら空を飛べますよね。
実はドローンは、「人がすでにやっていることを効率的に行う機械」と考えると、利活用の幅が一気に広がります。
測量の作業は、もともと地上で人が行なっています。
屋根の点検も、もともと人が行なっています。
ドローンのイメージを、「人ができないことをする」から「人がすでにやっていることを代わりにやる」というイメージに転換してあげると、非常に考え方の幅が広がりますのでご紹介させていただきました。
自治体のドローン利活用の可能性
では実際に、どのような分野でドローンを利活用できるのか、簡単な事例を含めて見ていきたいと思います。
点検分野
市町村の橋梁点検がドローンの利活用を判断する上でわかりやすいです。
国は、5年に1度の「近接目視」による橋梁点検を義務付けています。
日本には2m以上の橋が、約70万箇所も存在します。
その膨大な数の橋梁の点検を、目視で行うことが義務付けられているのは驚きです。
自治体では、「人もいないし、予算もない」という場所も多いそうです。
ドローンを活用することにより、点検にかかる時間や予算を大幅に減らすことができます。
医療分野
離島や山間地など、医師が不足する地域では、ドローンにより薬を配送することができます。
緊急時においては、水や血液、ワクチンなどを届ける手段としても活躍しそうです。
防災分野
災害時においては、何といっても現状把握が必要です。
被救助者の把握を行うことは何より大切ですし、何より救助者の安全も確保できます。
防災分野では、助けられる側も助ける側も何より「情報」が大切になってきます。
物流分野
離島や山間部においては、物流の難しさが大きな課題です。
ドローン物流が可能になれば、買い物における不便を解消したり、地域に住む方の生活の質の向上につながります。
林業分野
林業分野において、ドローンが活躍するのは森林情報の取得です。
人が行うと数日間かかる作業を、ドローンであれば数分で終わるというデータもあるそうです。
大幅な時間短縮は、人手不足や予算の削減に大きく役立ちます。
利活用分野のまとめ
先ほどドローンのイメージのところでお伝えしたように、各分野を見ても「すでに人が行っている業務」であることがわかります。
ドローンは空を飛びますので、もちろん人ができないことを行うことができます。
しかし、自治体での活用例を考えるとき「自分達がやっている業務をドローンに任せられないかな?」と考えることで、新しい利活用の分野が見えてくるかもしれません。
現在行われている実証実験
では、ドローン利活用のため、どのような実証実験が行われているかご紹介します。
有人地帯上空の飛行
ドローンの飛行レベルというものが定められています。
国の「空の産業革命に向けたロードマップ」では、
- レベル1:目視内での操縦飛行
- レベル2:目視内での自動/自律飛行
- レベル3:無人地帯における目視外飛行
- レベル4:有人地帯における目視外飛行
2022年12月5日に、レベル4の有人地帯における目視外飛行が解禁されました。
目視外飛行
ドローンは目視内飛行が基本です。
どこにドローンがいるか、操縦者が目で追いながら飛行させます。
しかし、物流などの分野で活躍するとなると目で追っていては距離が足りませんよね。
目視せずに飛行させ、かつ安全に目的地まで到着してくれる実験を重ねなければなりません。
長距離配送
長距離配送についても、実証実験が進んでいる分野です。
すでに離島への物流実験などは行われていますので、今後は有人地帯上空での飛行が可能かどうかが、ドローン利活用の幅を広げる大きな壁になりそうです。
今後の展望について
ここからは、今後の展望について述べていきたいと思います。
ドローン利活用が進んだ先には、どんな未来が待ち受けているでしょうか。
人口減少による課題の解決
自治体が抱える課題としては、人口減少や少子高齢化です。
両者については避けられない事実だとしても、人口減少に対抗する手段はありそうです。
それが今回の記事でご紹介しているドローンの利活用ですね。
「人がいない、予算がない」という自治体の問題点をドローンが解決します。
そもそも人が行っていた業務をドローンが代わりに行う。
大幅な業務時間の短縮が可能となり、効率的に仕事を進められるようになることは、人口減少による課題の解決に大きく役立ちます。
生活の質の向上を目指す
昔から住みなれた町で過ごしたいと思っている方が多くいらっしゃいます。
自分の好きな町で過ごすことは、生活の質に直結しますよね。
離島や山間部の町では、どんどん人口が減少しています。
買い物が不便であったり、医療が十分に受けられなかったりすることは、生活の質を落とします。
ドローンの物流分野が発展することは、生活の質を向上させるために必要不可欠です。
自治体がドローンを導入する上での課題は?
自治体がドローンを導入する上で、どのような課題があるでしょうか?
いくつかご紹介していきたいと思います。
ドローンパイロットの育成
何より必要となってくるのが、ドローンパイロットの育成です。
2022年12月5日からは、ドローンの操縦に免許が必要となりました。
ドローンパイロットの育成には、時間と費用が必要となります。
法改正に対する知識の習得
ドローンに関する法律は、かなりの頻度で改正されます。
ドローンはまだまだ発展途上の分野ですから、厳しすぎる規制は産業の発展をさまたげてしまう可能性が出てきます。
細かい法改正に対してしっかりとアンテナを張り、勉強をし続けなければなりません。
ドローンそのものの課題
ドローンそのものの課題もあります。
- 操縦時間が短い
- 悪天候に弱い
- 通信状況に左右されやすい
など、ドローンの性能は年々向上していますが、環境からの影響を大きく受けます。
環境の影響を受けにくい機体は価格は非常に高価なので、ドローン利活用を考える上で、ドローンそのものの性能も課題の一つとして挙げることができそうです。
まとめ
今回は、自治体の課題解決のためにはドローン利活用が必須であるということをお伝えしてきました。
ドローンについては、今後ますます発展していく分野であることは間違いありません。
記事の中でご紹介したように、自治体の方々が活用しうる分野を把握しておくことは非常に大切です。
また考え方としては、ドローンにしかできないことを考えるのではなく、人が行っていることをドローンに代わってもらうという発想が重要です。
自治体が抱える人口減少や少子高齢化などの課題に、ドローンの利活用が役に立つかも知れません。