インダストリー4.0のコアテクノロジーとして、今ドローンが注目されています。
例えば、2021年の東京オリンピックでは、ドローンショーとして、約1800台のドローンが稼働した実績があります。
また、ドローンショー以外にも、物流や農業などさまざまな分野において活躍することが期待されています。
しかし、ドローンを飛ばすことに関して、実は制限があることをご存じでしょうか。ご存じで無い方も、多くおられることでしょう。
ドローンの利用にあたって、現在さまざまな法律が作られ、改正が進んでいるため、知らなくても不思議ではありません。
そこで、この記事では、ドローンを飛行させるにあたり、航空法にどういう規制があるのか、道路交通法ではどのように扱われるのか、またドローンを飛行させることに関するルールはあるのかについて、解説していきます。
この記事を読めば、ドローンを合法的に、そして安全に飛行させることができるでしょう。ぜひ最後までご覧いただければと思います。
飛行が禁止されるドローン
ここでは、ドローンとは何か、航空法ではどのように規定されているのかについて解説します。
ドローン(無人航空機)とは?
そもそもドローンとは、小型の無人航空機のことを指します。サイズはさまざまなものがありますが、中には1mを超えるものもあります。しかし多くは50㎝四方に収まるものが多いようです。
ドローンの航空法での位置づけ
実はドローンは航空法により重量によって以下のように定義されています。
バッテリーと本体の合計重量が200g以上のものは無人航空機です。
また、バッテリーと本体の合計重量が200g未満のものは模型航空機(トイ・ドローン)とされています。業務用のドローンの多くは、200gを超えるものが多く、無人航空機の分類に入り、航空法によってその飛行が制限されています。
小型無人機等飛行禁止法とは?
ドローンの飛行を規制するのは航空法だけでなく、「小型無人機等飛行禁止法」という規制もあります。
小型無人機等飛行禁止法は、2016年4月7日に施行された、国が定める重要施設付近でのドローンの飛行を制限する法律です。
小型無人機等飛行禁止法では、重量200g未満のトイ・ドローンも対象内となるので、おもちゃのドローンだから、どこで飛ばしても大丈夫ということにはなりません。
また、航空法と比較すると、小型無人機等飛行禁止法はマイナーであまり周知されていない法律です。
なので、トイ・ドローンだとしても、飛行させて良いエリアかどうかきちんと確かめてから遊ぶのが良いでしょう。
航空法によるドローンの飛行禁止区域
航空法によってドローンの飛行が不可能なエリアは次の通りです。
地上または水面から150m以上の空域
地表又は水面から150m以上の高さの空域を飛行させる場合には、空域を管轄する管制機関(地方自治体によって設立されている)と調整しましょう。
空港周辺の空域
空港やヘリポート等の周辺に設定されている進入表面、転移表面若しくは水平表面又は延長進入表面、円錐表面さらには外側水平表面の上空の空域、(進入表面等がない)飛行場周辺の、航空機の離陸及び着陸の安全を確保するために必要なものとしてドローンの飛行が禁止されています。
つまり、航空機が離着陸する時に必要となる上空領域は、全面的にドローンの飛行ができないものとする規制です。
人口集中地区
人口密集地区の上空もドローンの飛行禁止区域となっています。
人口密集地区とは5年毎に国勢調査により一定の条件を満たしている区域のことを指しています。
実際にどの地域が人口密集地区になるかは、地理院地図「人口集中地区(総務省統計局)」で確認できます。
地理院地図を使ってドローンを飛行させたいエリアが、人口密集地区かどうか確認してみてください。
ドローンの飛行ルール
ドローンの飛行ルールにはさまざまなものがあります。
それは次の通りです。
日中の飛行
基本的には日中に飛行するようにしましょう。つまり、日の出から日没までに飛行させる必要があります。これは夜になると、ドローンの飛行が困難になるためです。夜の暗い中で、ドローンを飛行させることは危険が伴います。
目視範囲内でドローンと周辺を常時監視して飛行させる
基本的にドローンは「目視内飛行」を行うことが義務づけられています。
モニターを見るために機体から目を離す、建物等の影に隠れるなど、視界から見えなくなる場合はすべて目視外飛行となります。
もし、目視外飛行を行いたい場合は、専用の訓練とライセンスカードへの追記が必要となっています。
人や物から30m以上距離を保って飛行させること
人や建物、車などの物体から30m 以上の距離を確保して飛行させるようにしましょう。
30mはマンションの高さ10階程度の距離なので、意外と距離があります。
しかし、建物の点検などでどうしても物体に接近しなければならないこともあります。
その場合は、事前に飛行の許可申請を取る必要があるでしょう。
人の集まる催しの上空では飛行させないこと
お祭りやライブコンサートなどのイベントを行っているエリアの上空も基本的には禁止されています。
こちらは、2017年11月に岐阜県で起きたドローン事故を教訓に、規制がきびしくなりました。
業務上どうしてもドローンを飛行させたい場合は、国土交通省へ許可を貰う必要があります。
物件投下の禁止
ドローンに荷物を持たせ、その荷物を上空から落とすような行為は禁止されています。
しかし、業務上どうしても、空から荷物を落とす行為が必要な場合は、他の項目同様、国土交通省に許可申請を申し立てる必要があります。
ドローンは将来的な視点に立った場合、物流での利用が想定されており、空から荷物を落とす行為に関しては、今後法律の改正が進められることが予想されます。
ただ、今はドローンを活用するための法改正が進んでいる最中です。
そのため、今後も法改正がなされ、規制や禁止区域も更新されていくでしょう。
ドローンを上手く利用するためには、法改正についての情報を常にアップデートしていく必要があります。
ドローン飛行禁止の地域・空域
ここでは、ドローンの飛行禁止空域について、さらに踏み込んでみましょう。
原子力発電所、外国公館、米軍施設周辺、国会議事堂ほか
小型無人機等飛行禁止法で、具体的にドローンの飛行が禁止されているエリアは、原子力発電所、外国公館、米軍施設周辺、国会議事堂などとなっています。
さらに具体的に言うと以下の通りです。
- 行政などを司る施設
- 議員会館、衆参両院議長公邸など
- 総理官邸、総理及び官房長官公邸など
- 危機管理行政機関(内閣官房、内閣府、国家公安委員会、各省庁)
- 最高裁判所
- 皇居及び東宮御所
- 総務大臣指定の政党事務所
- 原子力発電関係
- 北海道電力株式会社 泊発電所
- 東北電力株式会社 東通原子力発電所、女川原子力発電所
- 東京電力ホールディングス株式会社 福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所
- 中部電力株式会社 浜岡原子力発電所
- 北陸電力株式会社 志賀原子力発電所
- 関西電力株式会社 美浜発電所、高浜発電所、大飯発電所
- 中国電力株式会社 島根原子力発電所
- 四国電力株式会社 伊方発電所
- 九州電力株式会社 玄海原子力発電所、川内原子力発電所
- 日本原子力発電株式会社 東海第二発電所、敦賀発電所
- 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 高速増殖原型炉もんじゅ、原子炉廃止措置研究開発センター
- 日本原燃株式会社 再処理事業所
このように国にとって重要な役割を担っている施設の周辺では、ドローンの飛行は禁止されています。
そのため、その場所でドローンを飛ばしても大丈夫なのか、事前に確認し、また飛行が可能だとしても、ドローンの飛行ルールを守って運用するように心がけましょう。
道路
道路上でのドローンの離発着も原則禁止になっています。
ここで言う、道路とは歩道も含まれます。
ただ、道路上空から空撮するだけであれば、許可は必要ありません。
道路でドローンを飛行させるのに問題となるのは、ドローンの飛行によって、交通の妨げになるかどうかです。
道路を走っている自動車や歩行者に、何かしらの危害が加わることが予想できたり、ドローンの飛行により、人が集まって一般交通に影響がでたりすることが考えられるケースでは、事前に道路使用許可が必要になります。
また、ドローンと自動車の間の距離が30m未満になることが予想される場合は、事前に、国土交通大臣の承認が必要となります。
私有地
私有地(自身が保有している土地)であれば、ドローンを飛ばしても問題ないように思われますが、航空法や、小型無人機等飛行禁止法で禁止されているエリアの場合は、やはりドローンの飛行は原則禁止されています。
空港周辺や、人口密集地区、原子力発電所周辺、国会議事堂周辺などでのドローン飛行は航空法もしくは、小型無人機等飛行禁止法に抵触しますので、ドローンの飛行を控えるか、飛行許可をいただかなければなりません。
史跡・公園・市町村による規制
史跡、公園も基本的には地方自治体によって、ドローン飛行禁止区域に指定されている場合が多いです。
そのため、公園や史跡付近で、ドローンを飛行させることを考えている場合は、事前に管轄の役所に確認をし、許可申請が必要な場合は、役所の指示のもと、飛行許可をいただきましょう。
アプリでドローンを飛ばせるエリアを把握
ドローンを飛行させる時に、その場所がドローンを飛行させて良いエリアかどうか確認する方法として、アプリで確認する方法が一例としてあげられます。
そのアプリは次の通りです。
ドローンフライトナビ
ドローンフライトナビは、航空法及び、小型無人機等飛行禁止法でドローンの飛行が制限されているエリアを、マップ上で確認できるアプリです。
空港、ヘリポート、自衛隊基地の情報も合せて確認できるため、さまざまな視点から、その場所がドローンを飛行させて良いかどうか確認することができます。
Googleマップのような地図に、制限エリアが色分けされているので手軽に飛行制限エリアを確認できます。
ドローン飛行チェック
do株式会社から展開されているドローン向け飛行制限確認アプリです。
do株式会社は、DJIの日本法人であるDJI JAPAN株式会社と、ITサービス開発を行っている株式会社ORSOの共同出資により2016年10月に設立された会社です。
航空法、小型無人機等飛行禁止法上、そのエリアでドローンの飛行が可能かどうか確認できます。
また、日の出や日没の情報までも加味されており、現在の時間がドローンの飛行が許されている時間帯かどうかも確認できるという特徴を持っています。
この2つのアプリ、「ドローンフライトナビ」、「ドローン飛行チェック」を併用すれば、航空法、小型無人機等飛行禁止法やドローン飛行ルールに基づき、どのエリアがドローンの飛行に適しているのか確認することができるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ドローンとは何か、ドローンを飛行させることに関する禁止事項、ドローンを飛行させる時のルールなど理解していただけたと思います。
この記事の内容を整理すると以下の通りです。
- ドローンとは小型の無人航空機のことを指し、サイズもさまざまなものがあり、中には1mを超えるものもある。
- ドローンは、航空法、小型無人機等飛行禁止法、道路交通法などによって、飛行できるエリアが制限されている。
- ドローンを飛行させる時のルールとして、日の出から日没までというルールがあり、原則日中の間にドローン飛行をさせることになっている。
- 現在の法律では、ドローンに荷物を持たせて飛行させ、空中から荷物を落とすことは禁止されているが、今後物流でドローンが活躍することが期待されているため法改正が予想される。
- 具体的に飛行が禁止されているエリアは、空港周辺、人口密集地区、国会議事堂などの政府の重要施設など。
- 道路については、道路交通法によって、ドローンの飛行が制限されていて、自動車から30m以上の間隔を開ける必要がある。
- 飛行禁止エリアでも、事前に許可申請をもらっていれば、飛行可能であるエリアもある。
- その場所がドローンの飛行が可能かどうかは、スマホアプリを使って比較的簡便に調べることができる。
これらの情報が少しでも皆様の役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
参考サイト
ドローンとは?意外と知らないドローンの定義を簡単に解説 – 株式会社マゼックス (mazex.jp)
小型無人機等飛行禁止法とは?200g未満のドローンも要注意 | 株式会社旭テクノロジー(ATCL) ドローン事業 (atcl-dsj.com)
航空安全:無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法 – 国土交通省 (mlit.go.jp)
人口集中地区(地域)、住宅密集地のドローン許可について解説 | ドローン飛行許可オンライン申請センター|バウンダリ行政書士法人 (drone-kyoka.jp)