ドローンによる配送は今まで様々な企業などで検討されてきました。
2022年の後期には現状の航空法が改正・施行され、レベル4(有人地帯での目視外飛行)が可能になります。これに伴い実用化が近づき、多くの企業がその利用に備えている状況です。
また、経済産業省も昨年「空の産業改革に向けたロードマップ2021」を制定し、ドローンの普及に備えた取り組みを実施しています。
現在、なぜこのようにドローン配送は必要とされているのでしょうか？
本記事ではドローン配送が必要とされる理由について詳しく解説します。
また、ドローン配送のメリット・デメリットなどについても詳しく解説をしていきます。
ドローン配送の需要がコロナ禍で加速
なぜ急速にドローン配送の需要は高まっていったのでしょうか？
その背景にはコロナ禍の影響が大きく関係しているようです。
ここからは急速に需要の高まったドローン配送と、コロナ禍との関連性や、ドローン配送の現状について解説をしていきます。
ECサイトなどの利用率急増による影響
以前までは買い物をする際、家族みんなで量販店などに出かけ、長い時間をかけて買い物にいくことが普通でした。
しかし、コロナ禍以降は出かけること自体が制限され、買い物をする際も、できる限り人との接触を避けることができるECサイトなどの利用が急増していきました。
そしてECサイトなどの利用率の増加に比例して各物流業者の配送料も急増していき、現在は物流業界全体が慢性的な人手不足に陥っています。
人手不足を解消するために、ドローン配送という選択肢が注目され、需要が高まっていったのです。
過疎地への有効的な配送を実現
ドローン配送では、コロナ禍においてもその機動力を十分に生かし、過疎地への配送を可能にしました。
現在、交通の便が非常に悪い山村などの過疎地に住み、生活必需品などを自分で購入することが困難な人の数は700万人を上回っていると言われています。
コロナ禍の中、これらの過疎地への配達で非常に活躍したのがドローン配送です。ドローン配送は、コロナ禍で人手不足になった物流業界で大いに活躍しました。
通常の配送では、過疎地の山村などへは長い山道を迂回しながら進んでいくため、とても時間が掛かってしまいます。
しかし、ドローン配送を利用すれば、地上から高さ約150メートル上空までの飛行が可能のため、目的地まで直接的に配送し、有効的な配送を実現しました。
海外各企業もドローン配送へ参入
このようなドローンの有効性は多くの企業などでも立証されていきました。
その中で、アメリカでは2021年にFAA(アメリカ連邦航空局)のドローン配送実証実験の許可を得て、アメリカで有名なドローン配達会社であるFlirteyと、製薬会社大手Vault Healthがドローンデリバリーで、唾液ベースのCOVID－19検査の配送に成功しています。
またAmazonでは、以前よりドローン配送によるサービス実現のため現在まで既に数回にわたる実証実験を実施しています。2020年にはドローン配送の正式な認可をFAAより受諾し、現在は積極的なドローン配送の展開が実現しています。
中国でもドローン配送への動きは活発になっています。
世界的な企業であるスターバックスやケンタッキーフライドチキンなどに、中国杭州のドローンのスタートアップ企業である、Antworkのドローン配送システムが導入されました。
また、その時に中国航空局の許可のもと、杭州地区の都市部でドローンを用いたコーヒーやチキンなどの配送を、初めて成功させ話題になりました。
さらに、中国で生活関連サービス事業を展開している美団(Meituan)も、2020年にドローンによる配送サービスを開始し、現在もそのシェアを拡大させています。
導入を急がれているドローン配送、宅配実証実験も実施
ここまでは様々なドローン配送の有効性や、各企業のドローン配送への取り組みを紹介してきました。現在日本ではこのドローン配送の導入を急ぐ企業が多く、導入のための実証実験などを数多く実施しています。
ここからは、なぜ今多くの企業がドローン配送を必要としているのか、また、日本の各企業が行っているドローンの実証実験などについて解説していきます。
深刻なドライバー不足
ドローン配送が増加してきた1番の理由として挙げられるのが
物流業界のドライバー不足です。
この問題は、日本のみならず海外でも同様の問題が生じており、配達料は年々増加しているのにドライバーは毎年減少している状態に陥っています。
さらに日本では少子高齢化が進み、物流業界でも労働力の確保が困難になることや、人手不足がさらに進んでいくことが予想されています。
このような状況を危惧し、物流業界では配送業務を少しずつでもドローンへ転換していくために積極的に実証実験を行う姿勢を見せています。
各企業によるドローン配送の検証
以上の状況を踏まえ、日本でも
- KDDI
- 日本航空
- JR東日本
- ウェザーニュース
- Terra Drone
以上の5社が2020年の8月から2022年の3月までの間に「東京都におけるドローン物流プラットフォーム社会実装プロジェクト」というドローンの実証実験を行っています。
このプロジェクトの実施により、ドローン配送の更なる有用性を検証し、一般的な実用に向けて確実に準備を進めています。
さらに2022年の後期の航空法改正に向けて、ドローン使用の増加が予想されるための検証とも思われます。
過疎地への実験的な配達も実証済み
また、実際にドローンを活用し過疎地域となった山村などの高齢者に、買い物支援のデリバリーサービスなどを展開している業者もあり、既にその有効性は実証されています。
ドローン配送により、過疎地へ効果的に物資を運ぶことができれば配送時間の短縮や、人件費の削減などにも大きく繋がっていきます。
そのため、各企業も完全な実用化に向けて準備に力をいれている段階です。
ドローン配送におけるメリット・デメリットを紹介
このような多くのメリットを持ったドローン配送ですが、なぜ日本は今までその実用化を進めてこなかったのでしょうか。
その理由としてドローン配送の実用化に関しては、様々なメリットがある反面、デメリット・問題点なども多いことが顕著になっているためです。
ここからはそのドローン配送におけるメリット・デメリットを紹介していきます。
ドローン配送におけるメリットとは？
ドローン配送における最大のメリットは物流業界の人手不足の解消と言われています。それ以外にも多くのメリットがあります。そのメリットについて詳しく解説をしていきましょう。
コストパフォーマンスが良い
通常の自動車や、バイクを使用しての配送では目的地までの燃料費や配送業者の人件費などがどうしても必要になります。
一方ドローン配送では、最初にドローンを購入する投資費用が掛かってしまいますが、それ以降は燃料などの費用が掛からないため、経費の削減に繋がることがメリットです。
またドローン配送は無人配送であるため、人件費なども全くかかりません。
これらの観点から考えると、とてもコストパフォーマンスの良い配送方法と言えるでしょう。
環境に配慮した配送を可能にしている
現在、国内の貨物輸送量の9割以上をトラックによる輸送が占めていますが、それに伴い、排出される排気ガスやそれに含まれる温室効果ガスが問題視されています。
様々な対策により、トラック輸送からのCO2排出量は減少してはいますが、それでも膨大な排出量であることは間違いありません。
そこで注目されているのがドローン配送です。
トラックなどの配送とドローンの配送でのCO2排出量を比べてみると、飛行距離が短く配送件数が少ない場合は、トラック配送よりもドローン配送の方が排出量が少ないことが報告されています。
このようにドローンは、短い距離の配送であれば非常に少ないCO2排出量で飛行可能のため、環境に配慮した配送を目指すのであれば各地にドローン配送用の拠点を設置し、その各拠点からドローン配送を行えば現状よりもCO2排出量削減に繋がり、環境に配慮した配送が可能になることでしょう。
過疎地や被災地への宅配も可能
田舎の山村などの過疎地では高齢者が多く住んでおり、高齢のため体の不自由な方なども多く、自分で買い物に行くことができない方も多いです。現在日本では「過疎地の高齢化」が進行しており、大きな問題となっています。
しかし、ドローン配送を活用すれば過疎地の山村部などに住んでいる高齢者の方への有効的な物資の運搬が可能になり、高齢者の方も物資不足の悩みが減少します。
またドローンはその飛行性能を活かして、地震などの災害により隔離・閉鎖されてしまった地域への支援物資配送の有効な手段として注目されています。
このようにドローン配送はその性能を最大限に発揮し、過疎地や被災地での配送において活躍することができます。
迅速な配達を実現
通常のトラックなどの配送では信号待ちや、目的地に到着するまで様々な道路を経由する必要があり、最短距離での配送は不可能です。
その一方でドローン配送では、最大150メートルの高さまで飛行が可能です。
そのため配送時には周りに障害物なども少なく、目的地までの直線的な配送が可能になり、迅速な配送を実現できます。また交通渋滞などにも遭うこともありませんので安心です。
しかし、ドローン配送はその性質上長距離・中距離の配送には向いていないため、各地にドローン配送用の中継ポイントを置いて運営をすることが重要です。
コロナ禍でも安心
コロナ禍ではできる限り人との接触を避け、感染拡大を防止に努めなければいけません。しかし、宅配の荷物を受け取る際には人との接触が必要不可欠となります。
その一方でドローン配送は通常の配送手段とは違い、無人での配送なので、人同士の接触が全くありません。
このようにドローンは荷物の受け取り時に人との接触が全く無いため、コロナ禍でも安心して利用ができます。
ドローン配送におけるデメリットとは？
ここまではドローン配送におけるメリットについて紹介してきました。
その一方でドローン配送にはまだ様々な問題点があり、本格的な実用化はまだ難しいようです。
以下では、ドローン配送のデメリット・問題点について解説します。
天候に大きく左右される
通常のトラック配送などでは、大型台風やその他の自然災害時は例外として、天候不良・強風時なども通常配送を行います。
しかし、ドローン配送では強風時などは飛行時にドローンが飛ばされ、ビル・マンションなどの障害物に接触・故障する恐れもあります。
その結果、台風接近時や強風時などは配送が不可能になってしまい、業務上大きなトラブルとなってしまいます。ドローン宅配を導入する場合はこの点も念頭におかなければいけません。
現在各ドローンメーカーが、このような弱点を克服すべく様々な研究・開発を実施していますが、一般的な活用にはまだ時間が掛かってしまうようです。
本人確認時のトラブル
ドローン配送は通常の配送とは違い、「無人配送」となります。そのため本人確認をすることが困難で、最悪の場合「誤配送」などのトラブルが発生する危険性が高くなってしまいます。
現在、カメラを搭載しているドローンも多く普及しており、それを活用して免許書などで本人確認を行えば解決できるかもしれません。
しかし、通常の配送でも免許証を提示することはほとんど無く、ましてやドローン配送で免許証などを提示・確認することは困難でしょう。
このようにドローン配送では本人確認時も大きなトラブルが発生してしまいます。
盗難や、犯罪に利用されるトラブルの可能性
ドローン宅配に使用されるドローンは、とても高性能に作られており、非常に価値のあるものです。そのため配送中のドローンを盗んで転売したり、ドローンから荷物を抜き取って販売したりするトラブルも発生する可能性があります。
また、ドローンは最大150メートルの高さまで飛行することができ、その機動力も抜群です。そのため、その小回りの良さを活かせば盗撮などには最適な条件を兼ね備えています。
ドローン配送を利用すればこのような犯罪行為に利用されるリスクも発生する恐れがあるため、注意が必要です。
まとめ
本記事では、現在必要とされているドローン配送についての様々な開設と、そのメリット・デメリットを徹底分析してきました。
現状では多くの問題点を抱えているドローン配送ですが、現在その様な問題を解決すべく多くの研究・開発が行われています。
ドローン配送は物流業界にとって有効な手段となり、今後様々な分野で活躍することは間違いありません。
