ドローンは小型の無人飛行機のことです。
空から人がいけない場所までカメラで撮影するなど利用されています。
近年スマートの農業が進められており、農薬散布にもドローンで農薬散布をする事で進められています。
どのようなメリットがあり、デメリットはあるのでしょうか。活用例を紹介して説明します。
農薬散布ドローンの市場での利用状況は
ドローンによる農薬散布は平成28年ころから普及し始め、農薬散布実績として平成28年度は684ha、平成29年度は9690ha、更に30年度は約2倍強との予測です。
農業ドローンは2016年度は100万台強が2018年度には6倍強の1000万台を越えています。
ドローンの認定機種は2018年12月でDJIが576、丸山製作所が236、エンルート218、クボタ183、TEAD110、東光鉄工64、ヤマハ17、スカイマティクス16、MAC-FACTORY13、マゼックス4の内訳となっています。(農林水産省「産業用ドローン普及に向けて」)
DLJのシェアが全体の40%でトップですが、クボタもDLJのOEMですのでクボタの13%を加えるとDJLのシェアは50%以上で大きいものです。
農薬散布ドローンを使うメリット
農薬散布ドローンを利用する場合のメリットは以下のように多くあります。
農薬の散布作業の均一化
農業用ドローンを使う最大のメリットは農薬・肥料の散布の効率化です。
作物を育てるために農薬の散布や肥料の散布は一番大事なことですが、高齢化か進む中十分ではない場合もあります。
結果十分に育っていない作物ができます。
ドローンを使って均一に肥料の散布、農薬の散布ができるようになります。
農薬の散布
ドローンを使って上空から均一に散布できます。
自動でコースを設定しておけば田の隅々まで欠けることなく、満遍なく散布ができます。
更に散布にかかる時間は人が散布する場合の5分の1と言われています。
散布時間の短縮と散布の均一化ができるので、農薬散布も苦になりません。
高齢化への対応
通常農薬の散布は動力噴霧器を用意して、ホースを引いて散布します。
1人では少し大変で、時間もかかり、高齢の人には困難になってきます。
ドローンを使えば一人で短時間で農薬を散布できます。
省力化できるので、若い人に任すことも簡単にでき、農薬散布無委託もできます。
農薬散布ドローンを使うデメリット
農薬ドローンを使えばよくなるメリットはありますが、デメリットも以下のようにあります。
農業ドローンの購入はコストがかかる
農業用ドローンの利用には初期費用として機体購入費がかかります。
5Lタンクのドローンで50万、10Lタンクのドローンは80万~200万になります。
購入が厳し人は共同購入して利用するケースもあります。
農薬の適期防除で毎年の害虫発生が少なくなり、農薬散布の省力化などでコストダウンできますが、導入には農場の広さも考慮に入れて検討が必要です。
作物にあったドローン用農薬が少ない
ドローン散布は農業取締法に基づき農林水産省に登録済の農薬のみ散布を許可されています。
登録されていない農薬は使用できません。
ドローンは積載量が少なく、薬剤タンクの容量が小さいために、高濃度・少量の散布が可能なドローンに適した農薬を使用します。
通常の農薬は希釈倍率が2000倍で10aで100から300lを動噴で散布します。
これを現行のドローンで散布するのは無理です。
承認済のドローン用の薬剤は希釈倍率が4倍から40倍と高濃度で散布量は10aあたり0.4~24lです。
例えば稲作のいもち病に対して、トップジンMゾルは4倍の希釈数で0.8l/10aの散布を3回以内となっています。
キャベツ向けのアクセルフロアブルは8倍の希釈数で1.6l/10aとなっています。
ドローン用農薬として承認されているのは、稲、キャベツ、ブロッコリー、ネギ、まめ、里芋、はくさい、レタスなどあります。
しかし作る作物によっては適用する農薬がなかったり、同じ作物の中でも種類は多くありません。
例えばキャベツの場合、農協に登録の農薬は30種類ほどありますが、ドローン用農薬は15種類ほどです。
共通の農薬もありますが、作る作物によってドローンの農薬散布ができるか見極める必要があります。
ドローンを使うには許可申請が必要か
ドローンを操縦するのに免許や資格はいりません。
ただ「農業水産航空協会」の認定教習所を受講した認定資格証がなければ、農水産の認定したドローンを扱えません。
主力メーカーのほとんどが農水協認定機なので、利用するには農水協の認定資格証が必要です。
認定を受けていない機体は性能が保証されていなくて、薬害やドリフトのリスクがあります。
農薬ドローンを使って農薬散布をする場合は事前に国土交通省への許可・申請が必要です。
申請は散布予定日の少なくても10開庁日までに申請が必要です。主な資料は下記の通りです。
- 無人航空機の飛行に関する許可・申請書
- ドローン機体の機能・性能に関する基準適合確認書
- 操縦者の旅行履歴・知識・能力確認書
国土交通省のホームページより申請方法の確認から申請書のダウンロードまでできます。
農薬散布ドローンの活用事例
農業用ドローンの活用はますます増加しています。ドローンによる農薬散布は農林水産省の令和3年の目標は100万haです。
令和2年は約12万haで令和元年の約6.5万から約2倍に拡大しています。
農薬散布用ドローンの販売数は令和元年で約1,922台から令和2年で約5,600台と3倍に増加しています。
農薬散布
撮影用ドローンで撮影した画像を分析して、雑草の発生場所を確認、ピンポイントで農薬用ドローンで農薬を散布できます。
作業時間も動力散布機に比べて50~75%削減できます。
またピンポイントで散布できるので散布量を動力散布機と比較して30~50%削減できます。
肥料散布
農薬散布ドローンでタンクの交換で肥料の散布もできます。
撮影用ドローンで発育不良な場所を特定して、肥料をピンポイントで散布します。
これにより動力散布機に比べて20~40%の散布量を削減し、作業時間も50~75%も削減できます。
農業用ドローンのピンポイントの追肥で収量、品質を抑え、生産量が安定します。
農薬散布ドローンの選び方
農業ドローンを選ぶときのポイントを紹介します。
タンク容量と散布面積で選ぶ
ドローンを使って農薬散布には、タンクの容量は重要です。
散布面積が0.5ha程度は価格の安い5Lタンクでもできますが、1ha以上の場合は10Lがおすすめです。
タンク容量の大きいドローンは16L品、30L品もありますが、価格も高く200万近くなります。
農薬を散布したい面積と散布量を確認して最適のドローンを選びましょう。
飛行時間で選ぶ
農薬散布用ドローンには飛行時間もチェックしておきましょう。
特に広い範囲に農薬を散布する場合は飛行時間が短いと散布を終えるまでに何度もバッテリーを交換する必要がでてきます。
一般的にドローンの飛行時間は約10分で、最長で約30分前後が市場にでているドローンの飛行時間です。
農薬散布を行う場合の農業ドローンには20分以上の飛行時間の目安とするのがおすすめです。
ドローンに搭載されるバッテリーはリポバッテリーと言われます。
正式には「リチウムポリマーバッテリー」と言い、軽量ですが大きな出力を実現しています。
リポバッテリーの容量と機体の重量で彦時間が決まります。
飛行時間が足りない場合は交換用のリボバッテリーを用意しましょう。
バッテリーは専用の充電器で圃場現場で充電できます。
専用充電器は低速充電で約50分、高速充電で約40分かかります。
操縦の安定で選ぶ
農薬散布ドローンは田畑の環境に左右されず安定した飛行できるようになっていると安心です。
そのための自動制御機能があることが大事です。強風時にもホバリング状態で高度維持や姿勢制御を行います。
位置情報をGPSで取得したり、センサーで地形合わせて高度を自動で保持す機能もあります。
また障害物に防止するのを防ぐ障害物センサーもあります。
農薬散布ドローンにどんな機能があるか確認して選びましょう。
自動航空機能で選ぶ
自動航空機能は設定した飛行ルートで自動で農薬散布します。
GPSとRTK(リアルタイム・キネマティック)という測位システムを使って誤差が数cmの正確な散布ができます。
安定した飛行で散布にかかる労力や時間を短縮できます。
農薬散布以外にも使えるかで選ぶ
ユニットやタンクを取り替えることで農薬散布以外にも利用ができるドローンがあります。
農薬の散布以外に肥料の散布やツールを取り付けて収穫物を輸送するなど1台で多用途に利用ができます。
農薬散布以外にドローンでできる機能も確認しておきましょう。
液剤以外に粒剤・肥料・豆つぶ剤の場合はタンクを取り替えて散布できます。
タンクは別途購入する必要がありますが、薬剤を1~10kgの任意の量で散布ができます。
ドローンを使ってのお米の播種や農作物の受粉は全国で試験段階です。
お米の播種ではドローンを使って種を散布したところ、収穫高は他の田んぼと変わらなかったとのことで、今後のドローンの活用が期待されます。
ドローンの材質で選ぶ
製品本体の重量は鉄の場合20kg~ですが、アルミニウムやカーボンファイバー製は約半分の重量で軽く持ち運びに便利です。
本体の重量はドローンの飛行時間に影響しますが、強度も必要です。
カーボンは軽くて強度が高く、振動も吸収する特性があり、ドローンでは多く用いられています。
アルミは柔らかくて加工がしやすいので、ドローンでは変形が必要なドローンの脚などに用いられています。
コンパクトに本体を運搬できるかで選ぶ
アームと本体の接続部分から折りたたむことができると、コンパクトに収納・運搬に場所をとりません。
また、フレーム部分が脱着可能で携帯に便利なドローンもあります。
田んぼに運ぶにはコンパクトな方が一人でも運べるので、折りたたみができるなどを確認しましょう。
価格で選ぶ
5Lタンクの農薬散布ドローンは約50万くらいです。
10Lタンク品が億ありますが、約80万~200万と幅広くあります。
農薬散布ドローンの主なメーカーと製品
日本国内のドローンメーカーは増加傾向にあります。
その中で有名なメーカーと農業用ドローンを紹介します。
DJI
DJIは中国メーカーでドローンのシェアは中国国内で高いものがあります。
2006年設立で2015年より産業用ドローンを生産販売しています。
農薬散布用ドローンとして8Lタンク(AGRAS T10)と30Lタンク(AGRAS T30)の大容量のドローンを2021年10月より販売しています。
本体価格はT10は120万とT30は170万となっています。
粒剤散布量はT30は最大40kgと1分あたり20kg以上で肥料を効率良く散布ができます。
マゼックス
2017年創業の東大阪の産業用ドローンの製造販売会社です。
農薬散布・防除・運搬の産業ドローンの納入実績は国内トップクラスです。
農業用として低コストの5Lドローン(飛助mini 55万~63万)と10Lドローン(飛助MG/DX 84万~90万)があり、運搬用にはウインチにより最大8kgの荷物を運ぶドローン(森飛)もあります。
サイトテック
サイトテックは2006年設立の山梨県の会社で、業務用のドローンの企画・開発・製造・販売とセミナー事業も手掛けています。
活動分野は林業・農業・輸送分野で活躍するドローンを手広く販売しています。
農業ドローンとしてはユニットの取り換えで液体散布と顆粒散布ができます。
アタッチメントを変えてコンテナなどの40kgの搬送もできます。
1台で多様な使い方ができるドローン(YOROI6S1750F)で農作業を助けます。
クボタ
創業181年の日本の農機具を製造販売するクボタも農業ドローンがあります。
クボタの農業ドローンは10Lタンクで自動散布ができる、薬剤と粒剤の散布のモデル(MG-1SAK 165万)やタンク容量を16Lに増量したモデル(T-20K 204万)があります。
すべてDJIのOEM商品ですが、クボタの農協等の販売ルートで売り上げを伸ばしています。
ヤンマー
トラクターなどの農機械を取り扱うヤンマーの農業ドローンは薬剤8Lタンク、粒剤タンク12Lの小規模農家用(T10 126万5000円)と薬剤タンク30L、粒剤タンク40Lの大規模農家用(T30 169万7300円)の2モデルがあります。
ヤンマーはDJIの代理店となっていますので製品はDJIのドローンです。
ヤンマーの農機と合わせてスマート農業へ展開をしています。
ヤマハ発動機
産業用無人ヘリコプターの開発・散布事業を通じて開発されたヤマハのドローンです。
2重反転ローターで前後進でもむらなく散布ができます。
10Lのタンクでの薬剤散布を10Lの粒剤散布に変更できるドローン(YMR-08 275万4000円)があります。
まとめ
いかがでしたか?高齢化が進む農業でスマート農業に進んでいますが、その中で農業ドローンの活用が不可欠になっています。
農薬の散布は作物を育てる上での最重要です。
農薬散布にドローンを使うことで省力化と効率化になりますが、まだまだ製品コストは高くなっています。
そんな農薬散布ドローンですが、多くのメリットがあり是非採用したい人も多くいます。
農薬散布ドローンで活用事例とメリットとデメリットを紹介しましたので、農薬散布にドローンを検討する時の参考にしてください。